ここから本文です。

SUSHI collection TOYAMA/ツアー1日目

2024年7月23日

県内外から美食家が集結。「寿司といえば、富山」を体験

握り 握り

▼目次

富山の寿司はなぜ美味しい?その理由を学ぶ

舌だけでは得ることのできない、感動の食体験

 

富山の寿司はなぜ美味しい?その理由を学ぶ

「寿司といえば、富山」がついに本格始動。「SUSHI collection TOYAMA」と題したツアーが開催されました。参加したゲストは、県内外の美食家やジャーナリスト、インフルエンサーなど、20数名。1泊2日を通して「富山の寿司はなぜ美味い?」を読み解いていきます。

まず、初日。新高岡駅に集合後、観光列車「ベル・モンターニュ・エ・メール3号」に揺られながら、「美食を生み出す富山の地質学教室」を体験します。目指すは氷見。講師に迎えるのは、「ジオリブ研究所所長」であり美食地質学者の巽 好幸氏です。標高3,000m級の立山連峰と水深1,000mの富山湾、高低差4,000mの特徴的な地形を持つ富山県。天然の生簀とも呼ばれる富山湾について、日本海ジオ・ヒストリーから、富山の地形の成り立ち、その風土が育む食材を最大限に活かす技で仕立てた「富山の寿司」がオンリーワンであることを学びます。氷見到着間近には、沿線の山と海の景色が広がり、ゲストの思い思い眺めている姿が印象的でした。なぜ魚が美味いのか。なぜ米が美味いのか。なぜ酒が美味いのか。巽氏の話を振り返りながら、目の前に広がるこの自然に感謝していたのではないでしょうか。

学びは続きます。氷見到着後、向かった先は、「氷見・網元の家 濵元家」。代々、氷見の網元として漁業を営んできた家柄であり、現当主は17代目を数えます。学びのテーマは、「天然の生け簀・富山湾の定置網漁の歴史」。教えてくれるのは、「氷見・網元の家 濵元家」の濵元洋子さんと「灘浦定置漁業組合」組合長の酒井 孝さんです。

定置網漁とは、障害物をよけて沖へと進む魚の習性を利用し、箱網部まで誘導された魚群を取りあげる漁法です。この地は、富山湾の中でも大陸棚が広いため、定置網を敷設できる水深帯や大陸棚から一気に深く落ち込む「ふけ」が多いことから、高密度に定置網を敷設することができ、古来より受け継がれた技法に工夫と技術を取り入れ、発展してきました。100年を超える歴史を持つ濵元家の家屋から感じとることができる海と人との共存の歴史も相まって、ゲストは真剣な眼差しで聞き入り、熱の入った質問が多く飛び交う場面も。

「ベル・モンターニュ・エ・メール3号」と「氷見・網元の家 濵元家」での学びは、「寿司といえば、富山」の根幹ともいうべき内容。富山の魚はもちろん、自然や文化、歴史を通した食文化の学びは、充実した時間となりました。

列車巽先生

車窓濱元の家

濱元さん

酒井さん

模型

 

舌だけでは得ることのできない、感動の食体験

夕食の会場となったのは、氷見の割烹料理・握り寿司の名店「成希」です。店主の滝本成希氏は、氷見出身。海外をはじめ、銀座の老舗有名店や日比谷の予約困難店で活躍後、2022年に帰郷し、開店させた人物です。今回は、東岩瀬に「Japanese Restaurant GEJO」を構える下條貴大氏も加わり、ゲストを振る舞います。富山出身の下條氏は、フランス、イタリア、スペインなど、豊富な海外経験を経て、2020年に開店。フレンチのエッセンスを感じる和食を中心に、締めに寿司を握るという独自のスタイルを提供しています。

今回は、カウンターと個室、ふたつの空間にゲストは着席。個室においては、この日のためにテーブル仕様からカウンター仕様に変更し、それぞれ前半と後半で滝本氏と下條氏が入れ替わり、ゲストにおもてなしをするという内容です。趣向を凝らしたこの演出には、ゲストも驚愕でした。

滝本氏は、鯵、鰤、さわらなどの握りをはじめ、肴には、牡蠣、蛸、カラスミ、さえずりを提供。鰤は、背トロ心臓を重ねるという工夫も。締めには氷見の郷土食、くじら味噌汁でゲストの胃を癒します。

下條氏は、白えび、バイ貝、大根寿司・サクラマス、のどぐろ昆布締め、氷見マグロなどの握りをはじめ、肴には、白子・ふきのとう・山菜・ホタルイカ、締めには満寿泉の貴醸酒から成る酒麹アイスとカステラを提供。

滝本氏と下條氏が同じ空間に並ぶだけでも特別な光景ですが、富山の食材や地酒を使い、それぞれ趣向を凝らした品々からは、土地に根付いた可能性の拡がりを感じ、まさに「寿司といえば、富山」。

また、今回、寿司や料理に合わせて提供されたお酒は、氷見で唯一の酒蔵「髙澤酒造」の「有磯曙 純米酒 大漁旗」と南砺市の山中で作られる「三笑楽酒造」の「三笑楽 純米酒」。「髙澤酒造」は、大正時代からある土蔵が見事なことで地域から愛されていましたが、能登半島地震によって被災。今なお万全ではありませんが、同県の蔵の助けで仕込みを再開し、酒造りを続けています。

この日、蔵元の髙澤龍一氏は、とにかく感謝の言葉を続けていました。食を通して繋がる絆は、味にも映り、寿司と日本酒が双方を引き立て合い、ゲストはそれをじっくりと、ゆっくり、丁寧に味わいました。

魚、米、日本酒。これらは、立山連峰と富山湾の共演でもあります。そこに人が介在することによって、美味を生み、食べ手を幸せにさせるのです。参加いただいたゲストは、愛着を持って富山に関わる富山の仲間、「幸せ人口」の一員になっていただけたに違いありません。

最後は鳴り止まんばかりの拍手喝采。満面の笑みを浮かべながらご堪能いただいたゲストの表情を見れば、ご満足していただけたことは言うまでもありません。それは、同時に、食事前に体験した「ベル・モンターニュ・エ・メール3号」と「氷見・網元の家 濵元家」での学びが結実した瞬間でもありました。

富山の寿司はなぜ美味しい? それを学び、食すからこそ、舌だけでは得ることのできない、感動の食体験が生まれるのです。

こうして「SUSHI collection TOYAMA」のツアー1日目は終了。2日目に続きます。

滝本氏

握り

握り

料理

下條氏

ネタ

握り

料理

酒

髙澤氏

【SUSHI collection TOYAMAで訪問、ご出演いただいた方々のご紹介(1日目)】

◆城端線・氷見線観光列車「ベル・モンターニュ・エ・メール3号~べるもんた~」

https://www.jr-odekake.net/railroad/kankoutrain/area_hokuriku/berumonta/

◆氷見 網元の旧家「濵元家」

※能登半島地震による修繕等のため当面の間、見学受付は休止中

https://www.himiamimoto.jp/

◆割烹料理握り寿司「成希」

https://naruki-himi.com/

◆Japanese Restaurant  Gejo

https://gejo.jp/

◆株式会社 髙澤酒造場

https://ariiso-akebono.jp/

Photographs:JIRO OHTANI
Text:ONESTORY