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更新日:2024年12月10日

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富山県 News Release

水槽内で飼育したアカムツ親魚から初めて産卵と稚魚の生産に成功

発表日 2024年12月10日(火曜日)

水産研究所では、高級魚であるアカムツ(ノドグロ)栽培漁業の事業化を目指しています。これまで、種苗生産や親魚養成の技術開発に取り組んでおり、この度、初めて水槽内で飼育したアカムツ親魚が産卵し、得られた受精卵から稚魚を育てることに成功しました。

成果の概要

これまでアカムツの種苗生産は、産卵期(8月下旬~10月上旬)に刺網漁船に乗船し、漁獲された魚から卵と精子を採取し、海上で人工授精していました。しかし、この手法では、良質な卵が得られるメス親魚が全体の2.5%程度と少ないため、安定的な受精卵の確保が難しく、栽培漁業の事業化に向けた課題のひとつとなっていました。

このため、富山湾で捕獲した天然魚を産卵親魚とするため、令和2~5年に合計69尾を水産研究所に移送し、研究所内の水槽で1~4年間飼育してきました。産卵に適した水温や明るさなどの親魚の飼育条件を検証した結果、飼育水槽内での産卵(収容尾数:15尾)と得られた受精卵をふ化させ、稚魚まで育てることに初めて成功しました。この研究成果は今後の安定的な種苗生産の実現につながります。

飼育した天然親魚の産卵

  • 8月21日に212,875粒の受精卵が得られ、109,200尾がふ化(ふ化率51%)。
  • 8月25日に148,500粒の受精卵が得られ、97,175尾がふ化(ふ化率65%)。
  • 8月30日に219,600粒の受精卵が得られ、184,000尾がふ化(ふ化率84%)。

12月8日現在、ふ化後100日齢(全長約5cm)の稚魚約5,000尾を飼育しており、来年1月頃に1,000~2,000尾を富山湾に放流する予定。

(※)稚魚の成育は順調で、今回天然魚が水槽内で産んだ受精卵は、種苗生産を実施するのに十分な量と質であったことが確認されました。

成功したポイント

  • アカムツは主に水深100~200mに生息していますが、産卵期には70~100mの水深帯に移動し、水温が高めの環境で産卵行動を起こすと考えられるため、水槽内の温度を産卵期の生息水温まで徐々に上げる試験設定を行いました。
  • 自然界で産卵している水深の明るさに合わせて、水槽の周りを暗幕で覆い明るさを暗く調整しました。
  • 自然界で食べている餌(ホタルイカ、キュウリエソ等)を主に与えました。

これまでのアカムツ研究の経緯

平成23年 アカムツの研究に着手(天然魚を飼育を開始)
平成25年

初めて稚魚(全長5cm)の生産に成功

(新潟市水族館マリンピア日本海、国立研究開発法人水産研究・教育機構と共同)

平成28年 富山湾に稚魚の試験放流を開始
平成29年 初めて放流したアカムツが漁獲された
令和2年 初めて水槽内で天然魚の産卵が確認されたが、ふ化せず
令和6年 初めて水槽内で天然魚が産んだ受精卵のふ化と稚魚の生産に成功

今後の展望

天然魚を長期間飼育することにより、水槽内での産卵や受精卵のふ化、稚魚までの育成に成功し、アカムツ栽培漁業の事業化に向けて大きく前進しました。また、当所で平成29年に人工授精してふ化した稚魚を7年間育てた人工生産の親魚からも今回初めて産卵が確認されました。ただし、人工生産親魚から得られた卵についてはふ化には至りませんでした。引き続き、親魚育成や産卵条件を詳しく検証し、安定的に採卵ができるよう研究を進めます。

(※1)本研究は、水産庁委託事業「さけ・ます等栽培対象資源対策事業」により実施され、アカムツ親魚の養成技術の開発は、新潟市水族館マリンピア日本海と共同で行いました。また、アカムツの親魚養成に関して、山形県水産研究所と有益な情報交換をさせていただき、今回の産卵成功につながったことを申し添えます。

(※2)水槽内でのアカムツ親魚の遊泳やホタルイカの捕食、卵からふ化する瞬間の動画は提供が可能です。

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【水槽内で成熟したアカムツ親魚】

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【得られた受精卵】

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【5cmまで成長したアカムツ稚魚】

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農林水産部 農林水産総合技術センター水産研究所

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村木・福西