更新日:2024年12月23日

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つつが虫病

概要

つつが虫病は、野外に生息するダニの一種であるツツガムシに吸着されることで感染するリケッチア症です。つつが虫病は、感染症法上の四類全数把握疾患となっており、医師は、つつが虫病と診断した場合には直ちに届出を行わなければなりません。

病原体と感染経路

病原体
 つつが虫病の病原体は、リケッチア科細菌(細胞内偏性細菌)の一種であるOrientia tsutsugamushi(以下Ot)です。Otには複数の血清型があり、国内では、Kato、Karp、Giliam、Kawasaki(Irie)、Kuroki(Hirano)、Shimokoshi型が報告されています。Kato型はアカツツガムシ、Karp型とGiliam型はフトゲツツガムシ、Kawasaki型とKuroki型はタテツツガムシ、Shimokoshi型はヒゲツツガムシが媒介します。
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細胞内のOt粒子の写真(左:ギムザ染色、右:間接蛍光抗体法で染色)

感染経路
 ツツガムシは、山林、河川敷などの草地、耕作地などに広く分布しています。ツツガムシは卵→幼虫→若虫→成虫へと成長します。若虫と成虫は地中や地表で昆虫の卵などを食べて生活しています。一方、幼虫(体長0.2~0.3mm)は地表に出て草の先端などで待機し、野鼠などの動物が通ったときに体表に吸着し、その体液(リンパ液)を吸うことで若虫に成長します。Otはツツガムシと共生しており、卵によって次代に受け継がれていきます。ただし、Ot媒介種のツツガムシのすべてがOtを保有しているわけではなく、Otを保有するツツガムシはコロニーを形成し、スポット状に点在して生息しています。ヒトは、Otを保有するツツガムシの幼虫に吸着されることにより感染します。ヒトからヒトへは感染しません。_

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フトゲツツガムシの幼虫(左:電子顕微鏡写真、右:光学顕微鏡写真)(体長 約0.2mm)
国立感染症研究所 小川基彦博士のご好意による掲載です。   

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国内の発生状況

つつが虫病は、江戸時代より東北地方の特定河川流域の風土病として知られていました。明治以降、病原体やベクターの研究が行われ、この風土病の原因はアカツツガムシによって媒介されるKato型のOtであると明らかになりました(古典的つつが虫病)。さらに、戦後の全国調査の結果、Kato型以外の新型つつが虫病も確認されました。国内のつつが虫病の患者数は、1950年の伝染病予防法による患者届出制度開始当時は年間100名程度でしたが、1960年代後半には10名以下まで減少しました。しかし、1970年代後半から全国各地で新型つつが虫病の患者が急激に増加し、1980年代には1000名近くの患者報告がありました。2001年以降は年間300~500名程度で推移しています。富山県においては、1978年に初めて患者が確認され、以降、継続して患者が確認されています(県内の詳しい発生状況は下記リンク参照)。

つつが虫病の発生は、Ot保有ツツガムシのコロニーの有無やツツガムシの幼虫が活動する時期と関連するため、地域性や季節性があります。北日本の一部に生息するアカツツガムシの幼虫は夏季(7~8月)に活動します。全国に生息するタテツツガムシやフトゲツツガムシは秋から初冬(9~12月)に卵から孵化します。秋に動物の体液を吸うことの出来なかったタテツツガムシの幼虫は越冬することが出来ません。一方、フトゲツツガムシの幼虫は越冬し、春季にも活動します。したがって、その地域でどの型のつつが虫病が流行しているかによって、患者発生状況は異なります。

富山県のつつが虫病の発生状況
※全国情報は国立感染症研究所 「ツツガムシ病とは」(外部サイトへリンク)を検索ください。

症状

主要3徴候は、発熱、発疹、刺し口です。tsu-ph
ツツガムシに刺されてから7~10日ほどして発熱(38~40度)します。発熱と同時または2~3日後に顔面,体幹に不規則な紅斑・丘疹性の発疹が現われます(写真右上)。また、ツツガムシの刺し口が径約10mmの黒褐色の痂皮に被われた潰瘍として確認されます(写真右下)。
その他に、頭痛、悪寒、全身倦怠、食欲不振、関節痛、結膜充血、咽頭発赤、下痢、嘔吐などを伴うこともあります。局所または全身のリンパ節腫脹、肝臓や脾臓の腫大がみられることもあります。
重症例では、播種性血管内凝固による出血傾向、中枢神経症状、肝障害、血圧低下や呼吸器症状も合併することがあります。

 

 

※写真は黒部市民病院皮膚科、福井米正先生より提供

治療・予防

治療
 治療薬としてはテトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシン、ドキシサイクリンなど)が有効です。山林、河川敷などの草地にでかけたり、農作業、庭いじりなどの後(7~10日)、急に発熱した場合、つつが虫病の可能性がありますので、早期に医療機関を受診するようにしましょう。
予防
 つつが虫病のワクチンは開発されていません。Ot保有ツツガムシが生息している可能性のある山林、河川敷などの草地、耕地などに立ち入る際、あるいは立ち入った後には、以下のことに気を付けましょう。
・素肌の露出を避けるため、長袖、長ズボン、長靴、手袋などを着用する。
・草の上に腰をおろしたり、寝転んだりしない。
・作業中に脱いだ上着やタオルなどを草の上に放置しない。
・できれば皮膚の露出部にダニ忌避剤を塗布する。
・立ち入った後は入浴し、体に付着しているおそれのあるツツガムシ幼虫を洗い落とす。
・脱いだ衣類を放置すると、衣類に付着したツツガムシにより家族が感染するおそれがあるのですみやかに洗濯する。

リンク集

お問い合わせ

所属課室:厚生部衛生研究所研究企画部

電話番号:0766-56-5431

ファックス番号:0766-56-7326

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