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更新日:2023年11月21日
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妊娠を希望する男女が、避妊せず性交を持ちながら1年以上妊娠しない場合、不妊症と診断されます(世界保健機構/WHO)。また性交が行えない場合なども含めて、日本生殖医学会では、何らかの治療をしないと自然に妊娠する可能性がほとんどない状態を不妊症としています。
不妊の原因は、男性側、女性側、また双方に因子がある場合などさまざまで、原因不明も多くあります。女性側の原因が注目されがちですが、約50%は男性側が原因とされています。生殖年齢の男性の約8%は不妊症といわれ、富山県の場合、生殖年齢を40歳未満とすると、計算上は約1万人が男性不妊症であることになります。不妊の原因は男女ハーフハーフ。妊娠を望むなら、男女ともに検査を受けることが大切です。
まずは精液検査をおすすめします。泌尿器科や不妊クリニックで受けることができます。パートナーと一緒に不妊クリニックを受診してはいかがでしょう。費用も比較的かからず気軽に受けられますが、検体(精液)が必要ですので、病院へ詳細をお問い合わせください。精液検査では、精液量、精子濃度、精子数、精子の運動率などを調べます。精液性状は日々変動します。検査結果が悪くても、再検査では問題がないこともあるので、複数回の検査が望ましいといえます。
精液検査で異常が認められた場合、より専門的な泌尿器科での精密検査を受けます。県内で検査を受けられる病院等については、県不妊専門相談センター(後述)にお問い合わせください。
泌尿器科での精密検査では、外性器を診察し、精巣サイズや精索静脈瘤(※)などをチェック。問診で既往症や常用している薬、仕事の内容や作業環境なども確認します。精液検査に加えて血液検査によってホルモンの異常などを調べます。精索静脈瘤が疑われる場合は超音波検査を行います。また無精子症(※)の場合、染色体検査を行うことがあります。(※=次項目参照)
不妊につながる、男性側のいくつかの症状が明らかになります。
精索とは、精巣の動脈、静脈、リンパ管と精管がまとまっている筒状の部分です。この中の静脈が何らかの原因によって血液が逆流してしまい、精巣の上の精索部の静脈が瘤(こぶ)状に太くなる状態です。健全男性でも15%程度にみられますが、男性不妊症の3〜4割、第二子の不妊では7〜8割に認められます。血液の逆流など血流障害が起きて精巣の温度が上がり、精子形成が障害されて精子の数が少なくなったり、精子の質が低下して動きが悪くなると考えられています。
精液中に全く精子がいない状態です。原因として考えられるのは、❶先天的な染色体異常や精子の通り道がない。❷小児期の停留睾丸による精巣機能の低下、そけいヘルニア手術による精子の通り道の欠損。❸精巣炎や前立腺炎、精巣上体の感染症のため通り道が詰まっている。❹放射線治療や抗がん剤治療が精巣機能の低下を引き起こしている場合などがあります。
勃起が起こらず性行為ができない勃起障害(ED)や、膣内射精ができない射精障害などが男性性機能障害です。ストレスや神経疾患のほか、糖尿病などが原因とされています。
症状に応じて薬物療法や手術を行います。手術で治療できるのは精索静脈瘤や一部の無精子症です。喫煙、過剰な飲酒、ホルモン剤の服用などは中止し、サウナや温泉など長時間の高温環境はできるだけ避けます(※次項目 かんたんチェック参照)。精液中に精子を認めない場合、陰嚢を切開して精子を回収する精巣内精子採取法(TESE)、また精巣上体内精子吸引法(MESA)を行います。精子を採取できれば、顕微授精が可能です。
富山県では、夫が精子を回収する治療(TESEおよびMESAに限る)を受けた場合、治療費を助成しています。
富山県男性不妊治療費助成について
特定不妊治療(体外受精および顕微授精)に取り組むご夫婦であって、夫が精子を回収する治療を受けた場合、30万円を上限に治療費を助成します。
<対象となる治療>
※ただし保険診療外の治療に限ります。
詳細は富山県厚生部健康課(https://www.pref.toyama.jp/120501/kurashi/kenkou/iryou/kj00001168/hunin-2021kakujyu.html)をご参照ください。
あてはまる項目はありましたか?
精巣は体温より2〜3℃低い温度でよく機能し、高温になると働きが低下します。高温環境を避けるために、ぴったりしたジーンズやブリーフの着用、太ももにパソコンを置いて使うこと、サウナや長風呂などもおすすめできません。(❶ ❷ ❻ ❾)
喫煙や飲酒は精子頭部のDNAにダメージを与え、精子の機能や質が低下する可能性があります。(❸ ❹)
またホルモン剤などの薬剤によって精子形成が障害されることもあります。ホルモン環境を悪化させる肥満にも注意が必要です。(❻ ❼)
糖尿病は射精障害など男性機能障害を起こします。長時間の自転車やバイクの運転は、勃起のための神経や血管を圧迫して勃起障害(ED)の要因になる可能性があります。(❺ ❽ ❿)
このように男性不妊症は、さまざまな生活習慣や慢性的な持病、子どもの頃の病気のほか、先天的な要因などが重なって起きると考えられます。
若い頃からのプレコンセプションケアに取り組みましょう。(PDF:1,459KB)
晩婚化が進むなか、30代半ばを過ぎると精子の受精する力が低下するという研究データもあり、不妊症の治療は早く開始する方が良いとも言えます。しかし、どのような治療方法を選ぶか、あるいは治療しないという選択もあり、その決断はカップルにゆだねられます。
カップルがしっかり向き合い話し合うことが大切ですが、互いに納得のいく決断をするには、専門的な正しい知識や情報も欠かせません。もし不妊クリニックや泌尿器科は受診しづらいと感じたら、まずは富山県不妊専門相談センターへお電話ください。男女を問わず、どんな小さな気がかりや疑問も気軽に相談できます。不妊の悩みを抱える皆さんに寄り添い、支えたいと願う専門相談員がお電話をお待ちしています。
076-482-3033
※祝日、年末年始は休み
076-482-3088
※日曜、月曜、祝日、年末年始は休み
お話をきいた人 / 富山大学附属病院泌尿器科 小宮 顕 診療教授
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