基金活動砺波市[般若]
「ホタルの里」の再生へ挑戦!砺波市般若地区
[作成:平成26年3月]
砺波市の庄川右岸に位置する般若地区は、国道359号と県道新湊庄川線が交差する交通の要所であるとともに、庄川沿岸の田園とその東部の河岸段丘の自然美が調和している地区です。
中世からの開墾の歴史を踏まえながら、農村が培ってきた自然環境の再生に向けた、住民一丸となった取り組みを紹介します。
中世荘園の名残りをとどめる歴史の地
般若地区の辺りは、中世には「般若野荘(はんにゃののしょう)」と呼ばれ、藤原氏の流れをくむ京都の徳大寺家が荘園を展開していました。12世紀初頭の庄川は今よりもずっと西側を流れていたため、広大な領域を有していたといわれています。また、平安末期の歌人・西行(さいぎょう)は、出家前に徳大寺家に仕えていたことから、西行と般若地区とのつながりについても研究が進められています。
「公卿塚」徳大寺家から下向し、この地で亡くなった家人たちを葬ったもの(般若地区安川地内)
西行の歌碑(「西住塚」般若地区に隣接する庄川町三谷地内)
土地改良と自然環境の変化
ホタル観賞の様子
このような歴史を持つ般若地区で近代的な土地改良事業(ほ場整備)が行われたのは、昭和50年代から平成の初めの頃です。大型農機導入のために農道を拡げても、農地の減歩(げんぶ)ができるだけ少なくなるよう、用水路をパイプライン化して地下に潜らせた結果、大区画ほ場が形成されて農作業の効率化が図られ、用水の安定確保も実現しました。しかし、これまで田んぼや水路の周辺で見られていた植物や生き物、特にホタルがめっきり減ってしまったのです。そこで「もう一度、ホタルがたくさん飛ぶ風景を復活させよう!」と地区住民が立ち上がり、ホタルの飛び交う田園空間を再生させる試みが始まりました。
「せせらぎづくり」と「ホタルの里」
「ホタルの里」
最初の試みとして、平成17年度に安川集落で砺波市の水辺空間整備事業を活用した「般若せせらぎ事業」を実施しました。まず、市道沿いの約200メートルの排水路からU字溝を撤去し、水路幅を約1メートルに拡げました。次に、岸には石と砂を入れ、勾配の急な箇所には落差を付けて水流をゆるやかにしました。さらに側路には、丸太の柵を設置した遊歩道を整備し、「ホタルの里」と名付けました。
協議会の設立と「ほたるメイト」の活動
住民が、積極的に地域環境を意識し、保全活動に参加することを目的に「般若ほたるの里・せせらぎづくり協議会」を設立。県の農村環境創造基金「美の里保全活動支援事業」を活用して、施設の管理やホタルが飛び交う空間の再生に取り組んでいます。大人だけでなく、地区内の子供たちにも地域の自然に親しんでもらおうと、学校やPTAを通じて庄東小学校児童に呼びかけ、30人余りの「般若ほたるメイト」が誕生しました。子供たちは、ホタルの生態を学ぶことからはじめ、幼虫のエサになるカワニナを放流しました。PTAの父母の方々も多数参加し、ホタルの産卵や幼虫が川から上がってくる時の手助けになるようにネコヤナギの植樹を行いました。そして、これらの活動をまとめ、公民館まつりで展示発表しました。さらにメイトのシンボルマークを決め、バッジやシールを作成し、メンバーとしての自覚と連帯感の向上に役立てながら、活動への積極的な参加や新規入会を呼びかけています。
これらの活動が実り、今では6月頃になると多くのホタルが飛び交うようになりました。メイトの子供たちの目には、深く根の張ったアシやヨシ類の撤去のために冬期間も活動する多くの大人たちの姿が映っています。子供たちが大人になってもずっと、「ホタルの里づくり」が引き継がれていくことでしょう。
ほたるメイトと父母の皆さん総出の草むしり
協議会役員による冬期間の除草活動
メイトの取組み内容をPRする活動報告とシンボルマーク