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更新日:2024年8月15日
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富山県では、すべての赤ちゃんに生まれつき体の代謝を助ける酵素や内分泌(ホルモン)等に異常がないかを調べる検査を行っています。
これまで、6つの病気の検査を行ってきましたが、新しい検査法(タンデムマス法)を利用することで、多くの病気を一度に検査し、早期に発見することによって、障害の発生と重症化を予防できる可能性が広がりました。富山県では、平成26年3月よりタンデムマス法による検査を導入し、20の病気を対象に検査を行います。
※「先天性代謝異常等の検査がより充実するためのお願い」はこちら
分類 | 疾患名 | 症状 | 主な臨床症状 | 発見頻度 |
---|---|---|---|---|
アミノ酸の代謝異常 |
フェニールケトン尿症 | フェニルアラニンというアミノ酸がうまく処理できない疾患です。血液中ではフェニルアラニン濃度が高くなりますが、尿にはフェニルケトンという物質が増えるので、フェニルケトン尿症と呼ばれています。フェニルアラニンを制限したミルクをあたえることで、知能障害が予防できます。 | けいれん 発達遅滞 |
1:6万 |
メープルシロップ(楓糖)尿症 | イソロイシン、ロイシン、バリンというアミノ酸がうまく処理できない疾患です。この病気の場合、尿の臭いがメープルシロップに似ているため、このように呼ばれます。イソロイシン、ロイシン、バリンを制限したミルクを与えることで、重度の体調不良(ケトアシドーシス発作といいます)を予防します。 | 多呼吸 アシドーシス |
1:156万 | |
ホモシスチン尿症 | ホモシスチンというアミノ酸が分解できない疾患です。血液中のホモシスチン濃度が高くなりますが、ホモシスチンの原料となるメチオニン濃度も高くなります。メチオニンを制限したミルクを与えることで、知能障害や脳梗塞を予防します。 | 遅れ 発育異常 |
1:78万 | |
シトルリン血症1型※ | この2つは、アミノ酸を利用するときにできる「アンモニア」の分解ができない疾患です。アンモニアは体に毒ですので、通常はすぐに分解して尿に出るようになっていますが、そこがうまく働きません。蛋白質を制限したミルクにしたり、アンモニアを処理する薬を服用したりして、重度の体調不良(高アンモニア血症)を予防します。 | 興奮 多呼吸 昏睡 |
1:26万 | |
アルギ二のコハク酸尿症※ | 1:40万 | |||
有機酸の代謝異常 |
メチルマロン酸血症※ | この2つは症状や治療法が似ているので、よく一緒に取り扱われます。母乳やミルクに含まれるたんぱく質から生じる酸性の物質が増加することにより、重度の体質不良(ケトアシドーシス)を生じます。これを予防するために、蛋白質を制限したミルクを用いたり、薬で酸性物質の尿中への排泄を促進させたりします。 | アシドーシス 遅れ |
1:12万 |
プロピオン酸血症※ | 1:5万 | |||
イソ吉草酸血症※ | 母乳やミルクに含まれるたんぱく質から生じるイソ吉草酸という酸性の物質が血液中に増加し、新生児のうちに重度の体調不良を生じたり、あるいは感染症などに伴って重度の体調不良を生じたりします。これを予防するために、ロイシンというアミノ酸を除去したミルクを用いたり、薬で酸性物質の尿中への排泄を促進させたりします。 | アシドーシス 体臭 |
1:52万 | |
メチルクロトニルグリシン尿症※ | 食事に含まれるたんぱく質から生じる酸性の物質が血液中に増加します。生後6か月以降に感染症などに罹患した際に、重度の体調不良を生じる危険性があります。これを予防するために、ロイシンというアミノ酸を除去したミルクを用いたり、感染症にかかった時は早めに点滴をうけるようにします。 | 筋緊張低下 ライ症候群 |
1:16万 | |
複合カルボキシラーゼ血症※ | 母乳やミルクに含まれるたんぱく質から生じる酸性の物質が血液中に増加し、新生児のうちに重度の体調不良(ケトアシドーシス)を生じます。これを予防するために、ビオチンというビタミン剤を服用します。 | 湿疹 乳酸アシドーシス |
1:52万 | |
ヒドロキシメチルグルタル酸血症(HMG血症)※ | 母乳やミルクに含まれるたんぱく質から生じる酸性の物質が血液中に増加し、新生児のうちに重度の体調不良を生じたり、あるいは感染症などに伴って重度の体調不良を生じたりします。これを予防するために、ロイシンというアミノ酸を除去したミルクを用いたり、感染症にかかった時は早めに点滴をうけるようにします。 | 重症低血糖 発達遅滞 |
- | |
グルタル酸血症1型※ | 食事含まれるたんぱく質から生じる酸性の物質が血液中に増加します。このため、神経の異常が生じますが、これは急激に生じたり、あるいは徐々に進行したりします。この予防のため、十分な食事カロリー摂取と蛋白質制限、ビタミン剤の投与を行います。また、感染症にかかった時は早めに点滴をうけるようにします。 | アテトーゼ 遅れ |
1:18万 | |
脂肪酸の代謝異常 |
中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD欠損症)※ | 脂肪酸のうち、中鎖とよばれる、炭素数がそれほど多くない脂肪酸が利用できません。このため、長時間の絶食や、感染症などでエネルギー消費が増えた場合などに、重度の体調不良を生じることがあります。この予防のために、乳幼児のうちは、あまり長時間絶食にならないように注意し、また、感染症にかかったときは早めに点滴などをうけるようにします。 | ライ症候群 SIDS |
1:10万 |
極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(VLCAD欠損症)※ | 脂肪酸のうち、極長鎖とよばれる、炭素数が多い脂肪酸が利用できません。このため、このため、長時間の絶食や、感染症などでエネルギー消費が増えた場合などに、重度の体調不良を生じることがあります。筋肉や心臓の異常を生じることもあります。この予防のため、脂肪の摂取を制限し、その代わりに、中鎖とよばれる炭素数がそれほど多くない脂肪酸からできたミルクを用います。 | 低血糖 筋肉・心障害 |
1:16万 | |
三頭酵素/長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症※(TFP/LCHAD欠損症) | 脂肪酸のうち、長鎖とよばれる、炭素数が比較的多い脂肪酸が利用できません。このため、長時間の絶食や、感染症などでエネルギー消費が増えた場合などに、重度の体調不良を生じることがあります。筋肉や心臓の異常を生じることもあります。この予防のため、脂肪の摂取を制限し、その代わりに、中鎖とよばれる炭素数がそれほど多くない脂肪酸からできたミルクを用います。 | ライ症候群 SIDS |
- | |
カルニチパルミトイルトランスフェラーゼ-1欠損症 カルニチパルミトイルトランスフェラーゼ-2欠損症※ |
脂肪酸を輸送するシステムに問題があり、特に脂肪酸のうち、長鎖とよばれる、炭素数が比較的多い脂肪酸が利用できません。このため、長時間の絶食や、感染症などでエネルギー消費が増えた場合などに、重度の体調不良を生じることがありますこの予防のため、脂肪の摂取を制限し、その代わりに、中鎖とよばれる炭素数がそれほど多くない脂肪酸からできたミルクを用います。 | ライ症候群 肝障害 |
1:31万 | |
糖の代謝異常 |
ガラクトース血症 | 母乳やミルクに含まれる糖(炭水化物)は、ほとんどが乳糖であり、乳糖とはガラクトースとブドウ糖からできています。このガラクトースをうまく処理できない体質がガラクトース血症で、乳糖を除去したミルクを与えないと、肝臓の働きが低下したりします。但し、ガラクトース血症は、日本人には非常にまれです。 | 多くは門脈形成異常 | 1:3万 |
内分泌の病気 ホルモン異常 |
先天性副腎過形成症 | 腎臓の上にある副腎から分泌される副腎皮質ホルモンが不足する疾患です。副腎皮質ホルモンは、からだを元気にする作用がありますので、不足すると、ミルクを飲めなかったり、体重が増えなかったりします。重度の脱水になる場合もありますので、早期に診断し、副腎皮質ホルモンを薬として投与することが重要です。また、副腎皮質ホルモンが不足すると、その影響で男性ホルモンが増加してしまいます。このため、女の子では、陰核(クリトリス)が大きくなったりすることもありますので、必要な場合は手術をすることもあります。 | 電解質異常 ショック |
1:2万 |
クレチン症 | 首の前部にある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが不足する疾患です。甲状腺ホルモンは、こどもの成長(体が大きくなること)と発達(脳が大きくなること)に大事ですので、気付かずにいると、身長が伸びないとか、歩いたりおしゃべりしたりが遅くなる、などの症状が出ることがあります。このため、早期に診断し、甲状腺ホルモンを薬として投与することが重要です。(医学的には、甲状腺自体に問題があるものと、中枢神経に問題がある場合とに分類されますが、症状はほぼ同じです。) | 発達遅滞 | 1:3,000 |
参考:新しい新生児マススクリーニングタンデムマスQ&A2012/厚生労働科学研究
神奈川県新生児マススクリーニングパンフレット2011
新生児マススクリーニングの新たな展開タンデムマス法の導入(1997~2011年パイロット研究より)
タンデムマスを導入した新生児マススクリーニング有機酸・脂肪酸代謝異常って何?一般向けガイドブック/厚生労働科学
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