安全・安心情報
更新日:2021年2月24日
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富山県立中央病院 小児科部長 畑崎喜芳
赤ちゃんにやさしい病院(BFH)とは母乳育児を推進している病院のことで、WHO、ユニセフによって認定されます。従ってBFHは世界130か国以上に数多くあり、日本では68施設あります。また、認定の際には、書類審査と訪問審査があり、それをパスしないといけません。富山県では、あわの産婦人科医院、富山赤十字病院、済生会高岡病院、そして富山県立中央病院がBFHです。
さて、2017~2018年に新しいBFHのガイドラインがWHO、ユニセフから出されました。そこには新生児病棟(Neonatal Intensive Care Unit:NICU)でも母乳育児を推進していきましょう、と書かれています。すなわちNICUに入院する未熟児や病気を持つ赤ちゃんにも母乳育児を進めましょうということになります。さてこの母乳育児ですが、単に母乳育児を進めるのではなく、その目指す所はより良い母子関係や児と家族の強い絆を築くことにあります。日頃、小さな未熟児や重い疾患を持つ赤ちゃんを数多く治療するNICUでは一体どんなBFH活動が行われているか、簡単にご紹介いたします。
生まれたばかりの赤ちゃんをお母さんの胸に抱っこすることをSTSと呼んでいます。
例えばとても小さな未熟児をお産すると赤ちゃんはNICUに入院し、保育器に入ります。従ってお母さんが我が子と初めて面会するのは数時間たってから、あるいは翌日ということになります。その場合、保育器に入っているとても小さい赤ちゃんに手を伸ばして触るのが“怖い”と感じるお母さんがいます。そのため、例え小さな未熟児でも生まれるとすぐに、わずか数分でもいいからお母さんの胸に抱っこさせます。そうすると、NICUにいる我が子に初めて面会に来た時でも、我が子とは再会になりますので、わりとすんなりお母さんは赤ちゃんに手を伸ばし、さすったりすることができます。
NICUに入院中の小さな赤ちゃんを保育器から出して、お母さんの胸に抱っこすることをカンガルー・マザー・ケア(KMC)と呼んでいます。こうすることによって、お母さんの我が子に対する自然な愛情が育まれていきます。確かに小さな赤ちゃんを保育器から出すことにはリスクを伴いますが、KMCにはリスクを上回るメリットがあると考えられています。このKMCの時に、できれば赤ちゃんにおっぱいを吸わせてみることが大切です。例えおっぱいが出なくても、あるいは赤ちゃんの吸う力が弱くてもいのです。直接授乳することで母子の心の絆が作られていきます。
また、お父さんがKMCをすることも大事です。お父さんがKMCをするとそれにはまってしまって、わりと我が子にメロメロになることもしばしばです。そうしたお父さんは赤ちゃんが退院した後も家で育児に協力的で、赤ちゃんの定期健診の時もお母さんと一緒に外来に来られたりしています。そしてNICUでは24時間いつでもご両親が赤ちゃんに面会できるよう配慮することが望まれます。
NICUに入院中の赤ちゃんに、お兄ちゃん、お姉ちゃんが面会することを“きょうだい面会”と呼んでおり、これもとても意義のあることです。上の兄弟が入院中の自分の弟や妹を見ると「とても小さい」とか「こんな病気を持っているんだ」とまず感じると思います。そしてびっくりすることもあるかと思います。しかしそんな自分の弟、妹が退院して自宅に来たときには自分たちの家族として受け入れなければなりません。その時にお兄ちゃん、お姉ちゃんとして何をしてあげられるか、そんなことを考えるのも「きょうだい面会」の時です。一般に、小さなお子さんをこのような集中治療室に面会に入れることには抵抗があります。しかし、きょうだい面会も家族の絆を深める上で大きな力を発揮すると考えています。
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