安全・安心情報
更新日:2021年2月24日
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富山県立中央病院 前母子医療センター部長
中野 隆
妊娠の診断を受けると、大きな喜びとともに、お腹に宿した赤ちゃんに何か異常がないかといった不安を感じている女性も多いと思われます。しかし、漠然とした不安を抱きつつ、病院を受診されても、なかなか言葉に出して先生に話せない人が多いのではないでしょうか。最近、メディアに取り上げられ、話題となりました無侵襲的出生前遺伝学的検査について説明します。
新生児100人当たり3~5人程度の頻度とされています。先天性心疾患、口唇・口蓋裂、水頭症などが代表的なものですが、指趾の形がやや他の子どもと少し違っているような小奇形も多くを占めます。先天異常の中で染色体異常は約25%を占めます。したがって、新生児の100人中1人の頻度となります。最も頻度の高い染色体異常は、ダウン症候群(21トリソミーといい、常染色体21番目が1本多い)で、35歳の女性における頻度は約1/300とされています。次いで18トリソミー(常染色体18番目が1本多い)が約1/4000、13トリソミー(常染色体13番目が1本多い)は約1/5000の順です。
妊娠16~17週で、羊水穿刺を行い、羊水細胞の培養を行うことで、染色体異常に有無について正確に診断することは可能です。しかし、羊水穿刺は、赤ちゃんのいる羊水腔に腹壁から針を刺して羊水を採取する侵襲的な検査ですので、約0.5%に流産が起こってしまう危険を伴っています。したがって、必ずしも安全な検査とはいえません。
現時点ではありません。しかし、染色体異常のリスクが高いかどうかを、妊娠の早い時期に見極めて、高リスクを対象に羊水穿刺を行うといった試みがこれまでもなされてきています。母体採血により、胎児由来タンパク質(3~4種類)を調べる母体血清マーカー(トリプルマーカーなど)があります。臨床現場では、かなり用いられてきましたが、あくまで、予想される確率にしたがって、羊水穿刺をするかどうかを決めることになります。例えば、ダウン症候群の場合は、35歳での頻度が約1/300ですので、これ以上に確率的に高ければ、高リスクと考え羊水穿刺をお勧めすることになります。しかし、この方法では精度に限界がありました。そのような状況の中、新しい出生前検査が登場しました。妊婦血中の胎児由来のDNAを用いて遺伝学的検査を行うのが、無侵襲的出生前遺伝学的検査です。
これまでの報告では、実際ダウン症候群であった子供さんが陽性と正しく診断される確率は99.1%、一方ダウン症候群ではなかった子供さんが陰性と正しく診断される確率は99.9%と非常に精度の高い結果が得られています。したがって、陰性と診断された場合は、羊水穿刺を省略できる可能性が出てきたともいえるわけです。陽性と診断された場合は、年齢による精度の違い(年齢が若くなるほど正確さは落ちる)もあることと、あくまでこの検査はスクリーニング検査であることから、羊水穿刺による確定診断が必要です。
まず、かかりつけの産婦人科医にご相談ください。無侵襲的出生前遺伝学的検査は、平成26年5月29日現在、全国で37か所の医療機関でのみ実施されています(現在、富山県内の医療機関ではまだ実施されていません)。この検査の前後での、実施医療機関での遺伝カウンセリングは不可欠とされていますので、説明に対して十分な理解をしていただいてから決めていただきたいと思います。
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