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更新日:2022年5月2日
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(令和4年2月25日掲載)
コロナ禍を受け、2021年春に営業を終えた富山第一ホテル。同年12月、富山市にオープンした『ぽっくる』は、同ホテルで働いていたパティシエが開いたコーヒーとケーキのお店です。オーナーパティシエの富川嘉文さんにお話を伺いました。
2021年12月、富山市内にオープンしたコーヒーとケーキのお店『ぽっくる』。コロナ禍で閉館した同ホテルでシェフパティシエを務めていた富川さんが開いたお店です。スタッフは富川さんを含めて5名。閉館時に製菓部門で働いていたスタッフ全員が集まりました。
ホテルの閉館決定前から、富川さんは、家業である自家焙煎コーヒー豆専門店『とみかわcoffee』をいずれ継ぐことになっていました。「家業とホテルのどちらを選ぶかずっと悩み続けてきたので、営業終了と聞いた直後は、正直なところ、これで家業に入れると思いました」と富川さん。ところが、「みんなで一緒にまたケーキ屋ができたらいいですね」というスタッフのひと言に心を動かされ、「家業を継ぐ中で、支店という形でコーヒーとケーキを生かしたお店を始められないかと考えました」。そこで、スタッフ一人ひとりに声をかけ、それぞれの意思を確認。「スタッフ全員が、やってみたいと言ってくれました」と富川さんは話します。
富川さんは、パティシエ歴32年。ホテルでは、下積みから始め、シェフパティシエを20年以上務めました。製菓作業を行う大理石のマーブル台や冷蔵庫、ミキサー、器具類など、ホテルで使っていた道具は買い取り、現在も使用しています。「入社当時からチョコレートのテンパリング(温度調整作業)などにも使っていたマーブル台には特に思い入れがあり、このまま埋もれさせるのがせつなくて。持ってきて使いたいと買い取りました」。
店内には、約10種類のケーキをはじめ、焼き菓子などがずらりと並ぶ。
「ホテルで働いていたことはセールスポイントにならないと思っていました」という富川さんは、「裏方はお客さんと直接、接していないので、マイナスの話は入ってきても、いい言葉があまり入ってこなくて。クレームだけが心に残り、自分たちの評価はそこまで高くないと思っていました」と明かします。そのため、ホテルでのパティシエ経験を前面に出さないまま、プレオープンを迎えました。
ところが、プレオープン後、ケーキを見て気付いてくれるお客さんや、「これ、ホテルの味だね」と声をかけてくれるお客さんがいたことで、「自分たちが評価してもらえていたのだと感じました。味に気付くのは、何度も食べてもらったから。営業終了からずいぶん経っても味を憶えてもらっていたことにも驚き、おいしいと評価してもらえたことがうれしかったです」。
コーヒー豆も販売。いずれは、パティシエの技術を生かす形で、コーヒーのテイクアウトも行う予定。
お店には、ホテル時代からのお客さんも多く訪れ、当時から人気のあったケーキを「結婚記念日に」とリクエストするケースもあるといいます。
富川さんは、「ホテルの結婚披露宴のデザートに『キイチゴのムース』を出していたことがありました。人気のスイーツだったのですが、それを憶えていて、『あのときと同じですか?』と聞かれることもあります。盛り付けが違うのに、味で気付いてもらえたことがうれしくて。頑張ろうという気持ちになりますね」と笑顔を見せます。
コロナ禍でのホテルの閉館については、「本当に辛かったです。当時、中国からの観光客が激減した頃から、体感として、これはまずいと思っていました。ホテルでケーキを作っても、そもそもお客さんが来ないので、何をやっても売れない。こういう商売は、もうできなくなるのではないかと思っていました」と振り返ります。「でも、こうしてみんなで一緒にやれる場が作れてよかった。スタッフみんなの気持ちがひとつになり、店を開くことができたし、今振り返れば、悪いことばっかりじゃありませんでした」。
ホテル時代から人気のアップルパイなど、魚津の加積りんごを使ったお菓子も並ぶ。
富川さんは、「ずっと作り続けているものは、評価が聞こえてきにくい。でも、なくなった途端、『もうなくなったの?』と尋ねられます。この店では、小さい子からお年寄りまで幅広い世代に愛されるケーキを提供していきたいです。ホテル時代のレシピを大切にしながらも、新しいものにも挑戦し、より多くの人に来てもらいたいですね」と意気込んでいます。
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